1998 8/13 「クトゥルーの呼び声」リプレイ 《キャラクター紹介》(50音順) ◎アルベルト=イスマス(40歳)  大学教授。専門は心理学。医学の心得もある。 ◎ガイ=スマートスケープ(23歳)  刑事。キャリア組でエリートらしい。なぜかパーティ最大の金持ち。 ◎ジェイソン(14歳)  なぜか14歳で警官。裏の稼業で殺し屋をしているらしい。(おいおい) ◎チャールズ=ブラウン(30歳)  ディレッタント。チャーリーと呼ばれると怒る。 ◎ラザフォード(26歳)  大学9年生。自称“識者”。 《プレイ前》 ガイ:この頃の1ドルは2円ですか。車が1000円とは。メルセデスベンツが一万六千円で買える。 ラザフォード:物価が違う、物価が。 チャールズ:(自作のキャラクター作成表を振っている)・・・家庭崩壊。頼まれると断れない。正直者。 《プレイ》 GM:時は1921年9月。場所はボルティモア。えーと、大西洋があって、ここにワシントンDCがあって、そのすぐ北にボルティモアがある。    ところで、この中に新聞記者はいる? 一同:いなーい。 GM:じゃあ、探偵は? 一同:いなーい。 GM:ええと・・・一番の金持ちは? ガイ:はーい。 アルベルト:何で警官がこんなに金もってんの? ガイ:しらなーい。 GM:ま、いいや。一番の金持ちに友人の新聞社の社長が相談にくる。サスケハンナ新聞社ね。『君、最近暇かね?』 ガイ:暇と言えば暇。 チャールズ:暇すぎて踊っちゃう。 GM:『それならちょうどいい。実はうちの記者が事件を起こしてしまったようなので、ちょっと頼み事がしたいんだが。いいかな』 アルベルト:事件? GM:アーサー=マンローという記者だが、取材に行ったまま帰ってこないんだよ』 ガイ:捜索願いは? GM:『出したけど、警察には見つけられなかった。・・・ということで、探して来てくれないかな?』 ガイ:分かった。行ってくるわ。 GM:パーティは全員知り合いでいいかな? 『一人当たり500ドル出そう』 ガイ:車が買える値段ですな。 ジェイソン:目的はその人を探すこと? GM:その通り。 ガイ:手掛かりは? GM:『取材に行った場所と日時くらいなら。テンペスト山事件は知っているかね?』 《知識》ロールしてみて。 チャールズ:・・・そんな事件は知らないよ(笑)。 GM:チャールズ以外は成功した? テンペスト山事件は1カ月ほど前に起きた事件で、−7月31日ね−、テンペスト山のふもとの村で住民の1/3が姿を消したという事件。 ラザフォード:新聞で知ってる。 ガイ:そいつの取材に行ったと、そのまま帰ってこないと、そいつは大変だ。500ドルと。もうちょっと(笑)。 アルベルト:金の亡者か(笑)。 ラザフォード:人捜しくらい、わけはない。 ガイ:ということで、みんなに話そう。『一人500ドルだって』 チャールズ:君と僕の仲じゃないか(笑)。 GM:平均年収が8500ドルとして、約1カ月分の給料にあたるかな。  正確には21日相当です。 ガイ:ということで、行きましょう。 ラザフォード:その前に情報収集。基本的な線を洗っておく必要があるだろう。データベースで事件の概要を。 GM:新聞社のデータベース検索ね。《図書館》+20でロールして。今回は成功度(目標値をどれだけ下回ったか)を宣言してね。 アルベルト:45。 チャールズ:32。 ガイ:56上回りました(笑)。 ラザフォード:ダイス目が81。全然だめだ。 ジェイソン:3。 GM:OK。テンペスト山に関わる事件を100年くらい前までさかのぼって見つけた。 ◎過去の新聞◎ 1763年12月1日 「去る11月24日、アルバニー在住のジョナサン=ギフォードはジャン=マーテンス殺人の容疑でマーテンス家を告発した。ジャン=マーテンスは頭部を砕かれた白骨死体となってマーテンス家の庭に埋められているのを訪問したギフォード氏が発見したもので、氏は一族がジャン=マーテンスを殺して埋めたものと主張している。  マーテンス家の弁護士は『ジャンは雷に殺されたのであり、埋葬許可も取っている』と語った。  ジャン=マーテンスは1670年生まれで、1755年から1760年まで独立戦争に従軍していた。」 1816年5月5日 「4月20日に行われた国勢予備調査団によると、テンペスト山麓のマーテンス家は無人になって久しく、荒廃しているという。家具の様子などから、同家はどこかへ移住したものと思われる。地元の話では、1810年ごろまで同家に明かりが灯っていたという。  同家はオランダ移民の建てたニューアムステルダム出身のゲリット=マーテンスの子孫であり、一族はみな、片目が青で一方が茶という特徴を持つ。」 1899年8月20日 「テンペスト山に植生調査中の男性2名が行方不明になった、と州警察に届け出があった。テンペスト山はこの時期、雷が多く、その日も雷が多かったらしい。雷の日に行方不明になる事件が数年おきに発生しており、地元住民には無人のマーテンス館の幽霊の祟りだと信じられている。」 1921年8月1日 「昨日、キャッツキル地方テンペスト山麓の集落で住民75名中25名が行方不明になる事件が発生した。事件のあった一角は雷が多く落ち、また、複数の住居が破壊されていた。住居内には無数の血痕と人体の破片が散乱しており、事件の異常さをうかがわせる。州警察は本日にも騎馬警官ら50名を派遣し、大規模な山狩りを行う予定。」 1921年8月3日 「7月31日に起きたテンペスト山の事件はいまだに成果を上げていない。人体の破片を合計した質量は5人分にもならず、警察は頭を悩ませている。事件の起こった集落に近いここ、ホテル・レファーツ・コーナーズには30人近い記者が詰め掛け、事件の行方を見守っている・・・・」 アルベルト:雷に打たれて白骨? チャールズ:100年以上前の記事だし。 アルベルト:あとは行ってみないと分からないんだな。 チャールズ:「現場百遍」と言うからな。 ジェイソン:じゃあ、行ってみよう。 ガイ:車、車ー。 ジェイソン:この時代に飛行機はあるの? チャールズ:第一次世界大戦で使ってるくらいだし。 GM:テンペスト山を中心としたいくつもの丘陵があり、その中にいくつもの集落がある。事件があったのはそのうちのひとつ。件の集落から5マイルくらい離れた町にこの地方唯一のホテル、レファーツ=コーナーズがある。その向かいには州警察署があり、警官や記者がたくさんいる。 チャールズ:じゃあ、とりあえず、話でも聞いてみますか。 ジェイソン:警察署にいってみる。何を聞くの? チャールズ:とりあえず、今回の事件のあらまし。 GM:新聞で発表された以上のことは分かってない。 ジェイソン:このカツ丼でも食って、本当のことを全て吐くんだ(笑)。 チャールズ:ここ、アメリカ。 GM:本当だって。雷が多くて、翌朝になったら人が少ないな、と。山狩りなんかもおこなったけど、成果はなし。 ガイ:山狩り・・・バーン。 チャールズ:うーん、今日仕留めた山はでっかいな(笑)。 ガイ:もう聞くことはないか。 ジェイソン:記者にも話を聞こう。 チャールズ:じゃあ、ホテルへいこう。 GM:ホテルは警察の向かいにある。 ラザフォード:向かいは嫌だなー。一番警察から遠い部屋をとろう(笑)。 GM:事件発生から日数がたち、人数は減っているとは言え、20人近い記者がたむろしている。 アルベルト:じゃあ、その中の一人に。 ガイ:こいつ(アーサー=マンロー)について。(写真を見せるポーズ) GM:『おや、こいつはアーサー=マンローじゃないか』 ガイ:いなくなったそうだが。 GM:『そうだな、ここ数日見てないな。いつもはレイ=マリナスって人と一緒だが』 ラザフォード:アーサー=マンローはここのホテルに部屋をとったのかな。 ガイ:カウンターで聞こう。FBIの者だが。 ラザフォード:嘘をつくな(笑)。 ガイ:捜索願いがでていますので、アーサー=マンローの部屋を改めさせてもらいたい。 GM:《説得》ロールをどうぞ。 ガイ:はっはっは。おれに説得力はない。(15%) ラザフォード:じゃあ、おれがやろうか。(25%) ガイ:・・・あ、でも成功してるわ。(ダイス目は10) GM:アーサー=マンローの部屋のカギを渡してくれる。レイ=マリナスについては、『ほら、あそこで食べているのがレイ=マリナスさんですよ』と、食堂を指す。 ラザフォード:じゃあ、部屋改めの方はまかしたから。おれはレイ=マリナスの方へいく。 ジェイソン:おれも。 チャールズ&ガイ&アルベルト:部屋にいこう。 GM:部屋の方から解決しようか。部屋の中はきちんと片付いていて、いくつかの私物が置かれているだけ。 ガイ:あさってみよう。 GM:《目星》ロールをどうぞ。 アルベルト&ガイ&チャールズ:成功。 GM:日誌や、本社へ送った伝票の写しなどが見つかる。9/1にここに来たようだ。9/6までの日付が日誌にある。内容は「成果なし」とか、「聞き込みした」とか書いてある。 アルベルト:役に立たん。 GM:9/6は「昼食はおいしかった」の記述のあと・・・。 チャールズ:「私はもうだめだ。化け物が近くまで迫っている」とか。そんなこと書いている間に逃げろって(笑)。 GM:・・・「レイ=マリナスと一緒にでかける」というようなことが書いてある。 ガイ:他には? 銃弾とか。 GM:コートや鉄砲や身分証明書のたぐいは見当たらない。 ガイ:でかけたまま、ってことか。 GM:では、聞き込みの方を解決しようか。レイ=マリナスは青い顔をして食事をしている。 ジェイソン:あんたが事件の犯人なんだろう。 ラザフォード:押さえとこう。やめろって。    こんにちは。ラザフォードさんですね・・・ちがう(笑)。 チャールズ:あんたやー(笑)。 ラザフォード:レイ=マリナスさんですね。同席してもいいかな? GM:『ご自由に』 ラザフォード:アーサー=マンローさんのことを調べているのですが。と小声で言おう。 GM:『君たち、アーサー=マンローの知り合いかね?』 ラザフォード:関係者です。 GM:『関わらんほうがいい』とつぶやいている。《心理学》と《精神分析》のうち高い方でロールしてくれるかな。 ラザフォード:成功。 GM:レイ=マリナスは何かにおびえているようだ。 ジェイソン:どうしたんですか? GM:『知らない方がいいことだ』 ジェイソン:教えてくれ。一人で悩んでいると体に悪いぞ。 ラザフォード:ここはもういい、とジェイソンの首根っこ掴んで。 GM:(ころころ・・・POW×5ロールに成功。勇気を奮い起こして、と)   立ち去ろうとすると、『君たち、頭数は多いかね?』と聞いてくる。 ラザフォード:手勢は多いですよ。 GM:『人数が多いなら、何とかなるかもしれんな・・・』そこに部屋に行った組が帰ってくるね。 ガイ:話を聞かせてもらおうか。おれは本物の警官だ。 ジェイソン:おれも本物。 チャールズ:14歳じゃなあ。 GM:《信用》ロールをどうぞ。 ガイ:成功。 GM:レイ=マリナスは少しためらったあと、『やはり話さねば』と言って『とりあえず、私の部屋に来てくれるかな』と言う。 ガイ:いいとも。 GM:部屋の中に入ると、扉の鍵をかけ、鍵穴までふさぎ、窓を閉じて、カーテンをしめる。    『私がここに来たのは8月の初めだ。最初はテンペスト山の話を聞いて興味本位で登ってきたのだ。ここで意気投合した仲間と共にマーテンス館に泊まり込んだのだ。しかし、その二人は落雷の中で消え去り、私は恐怖にかられ、このホテルまで逃げ戻って来た。』    『そのころ、アーサー=マンローという新聞記者に出会い、彼の取材に協力することになった。やがて二人でもう一度マーテンス館に向かうことになった。』    『ところが、マーテンス館へ行く途中、雷雨に襲われ、近くの猟師小屋に逃げ込んだ。それから・・・ああ、思い出せない』    『何があったのか、はっきりと思い出すことができない。とにかく、雨の中を逃げてホテルに戻って来たとき、アーサー=マンローはもういなかった。』 ジェイソン:アーサー=マンローは・・・。 ガイ:・・・行方不明になった。最悪の場合は・・・。 ラザフォード:館と雷。これに何か問題がある。 ジェイソン:館へいってみよう。 ラザフォード:準備を入念に整えて。 チャールズ:(地図を見て)土饅頭? GM:土饅頭はテンペスト山一帯に見られるもの。原因は不明だが、土が盛り上がってできるらしい。 アルベルト:館へ行って、途中で猟師小屋に寄る。 GM:猟師小屋は5m四方くらいの正方形の小屋。 ラザフォード:狭い館だな(笑)。 チャールズ:違う。 ガイ:一晩、ここで泊まるか? ラザフォード:何も無さそうだ。館へ行こう。 GM:館はかなり荒廃している。人が住まなくなってから100年はたっている。 ラザフォード:とりあえず、ざっと見渡してみる。 GM:塀はところどころ崩れている。(地図を示す)ここにライフルが落ちている。 アルベルト:見覚えは、レイ=マリナスさん? GM:『ああ、きっとトビイのライフルだ。消えた二人の片割れだ』   『ジョージ=ベネットとウィリアム=トビイという二人とこの館に泊まりこんだ。そして消えた。この二人を捜そうとして、アーサー=マンローも消えた』 ラザフォード:調べる。特に変わった所は? GM:ない。 チャールズ:弾は? GM:全弾ある。火薬は湿っている。 ガイ:撃つ間もなくやられちゃった、ってやつだな。 ラザフォード:上を見てみる。 GM:2階の部屋の窓が開いている。 ラザフォード:中に入ってみる。 チャールズ:まず、玄関からが無難では。 ガイ:いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか(笑)? チャールズ:チーズバーガーひとつ(笑)。 ガイ:ご一緒に照り焼きバーガーはいかがですか(笑)? ラザフォード:もういいって。  一行は館の1階を捜索します。 GM:ここは大広間らしいね。壁にいくつも肖像画がかかっている。どれも片目が青で、片目が茶色。 チャールズ:ヘテロクロミア? ラザフォード:あれって、劣性遺伝だったよね。 GM:まあ、こういう設定ですから。  そして、2階にやって来ました。 ラザフォード:この部屋だな。 ガイ:開ける。 GM:扉に触れると、扉ごと外れた。蝶番が引き裂かれている。    『私が泊まったとき、扉は正常だった。鍵をかけて、扉の前に机を置いて眠ったんだ』とレイ=マリナスさん。 ガイ:部屋を調べる。 GM:《目星》ロールしてみて。 全員:成功。 GM:床に鋭い何かで引っ掻いたような跡がある。そして白い動物の体毛がいくつも落ちている。これは《博物学》でロールして。 ラザフォード:成功。 GM:類人猿かヒトの体毛だと思った。 ラザフォード:窓の下を見る。 GM:ライフルの落ちていたところだ。 ガイ:もう何も無さそうだし、帰るか。 GM:だれか、代表でD100を振って。 アルベルト:・・・75。 GM:すると、館を出てしばらくすると、雷の音がして、そのうちに雨が降り始めた。 ラザフォード:さあ、来たぞ。 アルベルト:一番近い建物は? GM:例の猟師小屋。 チャールズ:やっぱり。ここは、いくしかないでしょう。 ジェイソン:おれは町まで帰る。 GM:他に町まで帰る人は? ジェイソンを除く全員:猟師小屋へいく。 ジェイソン:やっぱりおれも。  命拾いしたなあ。クトゥルーでは一人で別行動を取るとSAN値チェックの元(「死体」とか「え、私死んだの?」なもの(笑)とか)にされたりするから。  ひとりだけどこかへいってしまって、しばらく後に、見るも無残な姿で・・・てのはホラーの王道だよね。 GM:猟師小屋に着くころには雨は猛烈な勢いになり、ほとんど視界がない。   さて、ここでは位置が重要になるから、各自、自分の位置を明示してくれい。(見取り図とトークンを用意する) ラザフォード:一番扉に近いところ。 アルベルト:暖炉のそば。 ジェイソン:その反対側。 チャールズ:たきぎの近く。 ガイ:窓のそば。 GM:では、窓に近いガイさんとチャールズさん。《目星》か《隠す》のうち、高い方でロールをおこなってください。 ガイ&チャールズ:成功。 GM:では、二人には窓の外にぼんやりと光が浮かんでいるのが見えた。    光は非常に弱く、窓からちょっと遠ざかると見えなくなってしまうほどだ。 ガイ:なんだろう。 チャールズ:みんな、窓の外に光が。と警告。 ジェイソン:撃ってみようか。 チャールズ:・・・全員、武器用意。 ラザフォード:扉を開けて、外に出てみる。 GM:それでは、《幸運》ロールをどうぞ。 ラザフォード:・・・失敗。 GM:風がうなったかと思うと、何かが君の目の前を通り過ぎた。    《回避》ロールをどうぞ。 ラザフォード:・・・ファンブル。  ダイス目が96から100はファンブルとなります。 GM:それなら・・・3点のダメージ。何か鋭いものが君の腕をかすめ、腕から鮮血が吹き出した。生命にかかわる判定だったから、《回避》のチェックボックスにチェックをいれておいて。  「クトゥルーの呼び声」では、(クトゥルー神話知識を除いて)ほとんど技能は上昇しません。数少ない機会の一つに、重要な判定に成功した場合に、その技能にチェックをつけるというのがあります。これは、シナリオ終了時にその技能が上昇する可能性がある、ということを指します。  ルールブックには「成功時」と書いてありますが、GMの判断で、失敗したときでも認めてもいいでしょう。成功だけでなく、失敗からも何か学ぶものがあるはずですから。 GM:今度はDEX(敏捷度)×5ロールをして。 ラザフォード:・・・また失敗。今日はダイスが悪いぞ。 GM:あまりに速いので、君の腕をかすめたものの姿を捉えることはできなかった。    ここからはDEX順に行動しようか。相手が見えないので、攻撃する場合、−20のペナルティがかかるから。 ジェイソン:ラザフォードを引き寄せて、傷を診る。 GM:《医学》か《応急手当》のうち、高い方でロールして。 ジェイソン:失敗。 GM:じゃあ、止血できた程度かな。 ガイ:扉の外に発砲。・・・外れ。 アルベルト:同じく・・・命中。ダメージは・・・7点。 GM:扉の外で「ぎゃあっ!」と悲鳴が上がる。そして気配が逃げていく。 ラザフォード:SAN値チェックはしなくていいの? GM:いいよ。今回は。  SAN値チェックは「クトゥルーの呼び声」の醍醐味です。宇宙の真理は、人間には受け入れ難いものです。したがってPCが宇宙の真理を垣間見たとき、SAN値(Sanity=正気)を失う、というルールになっています。一度に、あるいは短時間に多くのSAN値を失うと、発狂したり、錯乱状態に陥ったりします。  「いかにストーリーの重要地点で発狂するか、を楽しむゲームだ」と明言する人もいます。 アルベルト:怪我を診よう。《医学》で・・・成功。 GM:1D3点回復する。 アルベルト:・・・3。 ラザフォード:全快ー。 GM:出血の割に、たいした怪我ではなかったようだ。適切な事後処置を行えば、跡も残らないだろう。    突然、レイ=マリナスが、『思い出した。』と叫ぶ。    『あの日ここで、今日のように雷と雨に閉じ込められた。しばらく雨がやむのを待っていると、アーサー=マンローは「なんだ」と言って窓から身を乗り出した。そして、後ろ姿はそのまま身動きひとつしなかった。後ろ姿は。上半身が後半分しか残っていないマンローを見た私は、恐怖に襲われ、雨の中を走ってホテルに戻ったのだ。』 GM:いつの間にか雷雨の勢いは弱くなっている。だれかD6振って。 ガイ:・・・6。 GM:6時間後、雨がやんだ。そろそろ夕方だ。 チャールズ:外に出ようか。 GM:地面には、戸口から点々と血の跡が森の方へ続いている。 チャールズ:これは、追えということだな。 GM:追跡するのなら、《追跡》か《隠す》のうち、高い方でロールして。 ジェイソン:成功。 ラザフォード:おれも。 GM:しばらく血の跡は続き、森の境の土饅頭のところで消えている。 チャールズ:土饅頭を撃つ。 ガイ:土饅頭を掘り返す。 GM:撃ったり、掘り返したりすると、ぽっかりと地面に穴が開いて、トンネルが姿を現す。3mほど垂直に進んで、そこから水平にどこかに続いている。 ガイ:ランタンを点けて進む。 GM:降りるときに《登攀》+20ロールをおこなってね。失敗すると滑り落ちて耐久力を1D3ポイント失うから。 ジェイソン:・・・失敗。1点怪我した。 GM:足を滑らして、底まで落ちたな。ちょっと背中をすりむいたようだ。 アルベルト:後で診るから。今は先へ行こう。 GM:しばらく進むと、山の中の沢に出る。どうやらテンペスト山のどこからしい。二つの崖に挟まれたようなかたちで川が流れている。その川の向こうにいくつもの土饅頭が見える。    そして、遠くで雷鳴があり、沢の向こうの土饅頭が盛り上がり、崩れ、そこから白いものが姿を現す。 チャールズ:でたー。 GM:はい、SAN値チェック。お待たせしました。成功したら1D2。失敗した人は1D6の正気度ポイントを失います。    その白いものは猿と人のデフォルメのような姿をし、鋭い鉤爪と白い体毛を持っています。次々と姿を現し、数十とも数百ともおもえる数になった。君たちに気づくと川の向こうで騒ぎだすけれど、増水した川は渡れそうにない。 全員:(SAN値チェックをおこなっている)・・・成功。 GM:ちっ。面白くないなあ。 ラザフォード:発砲。・・・外すか。 GM:外れた弾丸は崖に当たり、少し土砂や石が崖を転がる。《知識》ロールして。・・・成功した人には、向こうの崖は雨で弱っていて、ある程度の衝撃を与えると崩れそうだということに気づく。    ああ、ついでに《アイデア》ロールしてくれるかな。・・・成功した人には怪物の目は、片方が青、片方が茶色だということに気づくね。 ラザフォード:気づかなかった方がよかったかも。 GM:《遭遇した生き物》欄に『潜み棲む恐怖』と書いておいてね。 ガイ:これって、やっぱり。 アルベルト:ええい、発砲。・・・外れ。 ガイ:俺も発砲。・・・命中。・・・ダメージは10点だ。 GM:一体の怪物が負傷してよろめいた。と、そいつを手慣れた手つきで他の怪物が引き裂き、食いつき、むさぼり食ってしまう。 ラザフォード:う。またSAN値チェックがいりそう。 チャールズ:どんどん撃ってやろう。 ジェイソン:発射・・・命中。・・・ダメージ6。 GM:だれか代表で1D100振って。 ガイ:・・・01。 GM:最後にすごい目を出すなあ。・・・一条の落雷が向かいの崖の上の木に落ちかとおもうと、それが契機となって、崖がゆっくりと崩れ出す。すぐに崩壊は加速され、土砂が怪物たちを飲み込んでいく。 アルベルト:逃げるぞ。トンネルに潜って。 GM:君たちの後ろで轟音が響き、怪物の最後の1体が飲み込まれた。ようやくトンネルから這い出すと、トンネルそのものも崩れ落ちる。あとはただ、夕闇の中、どこか遠くから土砂崩れの轟音がとどろいているだけだ。 《終わりに》  さて、今回はラヴクラフトの作品『潜み棲む恐怖』The Lurking Fear(1923年発表)をもとにしたシナリオです。青と茶の目をもち、雷で人肉嗜好を誘発する一族の子孫に主人公が出会って、テンペスト山をダイナマイトで吹き飛ばしてしまう、という作品です。  さすがにPCが山を爆破するなどの行為に出るとは思えなかったので、幸運な土砂崩れが事件を終わらせる、という手法をとりました。もちろん、ダイスの目と行動によっては、雷の日にはもう外出できなくなるという結末になっていたでしょう。その場合、すべての土饅頭を埋め尽くすとか、あるいはダイナマイトへの道を開くかもしれませんが。  町でもっと情報収集を行ってもらって、巨大な魔物を想像させ、実は小さな生き物の集団、というひっかけも用意したのですが、使う機会がありませんでした。  今回は1度しかSAN値チェックがなく、だれも失敗しなかったという、およそ「クトゥルー」らしからぬシナリオになってしまいました。まあ、僕には、これくらいがちょうどいいのかもしれませんが。 GM:おっと、忘れていた。ラザフォードさん。《回避》技能の上昇チェックをおこなってみて。  チェックボックスにチェックがついた技能は、上昇する可能性があることを示します。シナリオ終了時にその技能ロールを行い、失敗すれば、技能が上昇します。これは、高い技能ほど成長しにくいことを再現したものです。 ラザフォード:技能は24、ダイス目は41。上回った。ということは、   (ころころ)5点上昇して《回避》技能は29になった。わーい。